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【トラ技ジュニア検定① 正答と解説】回路図を読み解く! バイポーラ・トランジスタの電流/電圧増幅回路

【トラ技ジュニア検定① 正答と解説】回路図を読み解く! バイポーラ・トランジスタの電流/電圧増幅回路

トラ技ジュニア No.44(2021年冬号)p.39に掲載した「【トラ技ジュニア検定①】回路図を読み解く! バイポーラ・トランジスタの電流/電圧増幅回路」の解答を掲載します.
問題文および図については,誌面にてご確認ください.

宮崎 仁

[正解]

[解説]

 図2の回路は,入力電圧Vinが負(Vin<0V)のときは,ベース電流IBが流れる方向とは逆向きの電圧なので,IBは流れず,コレクタ電流ICも流れません.Vin≧0でも,ベース-エミッタ間電圧VBE=0.7Vより低ければIBはほぼ流れず,コレクタ電流ICもほぼ流れません.いずれの場合も,出力電圧Voutは5Vを保ちます.
 Vin>0.7Vのとき,Vin-0.7Vに比例し,R1=20kΩに反比例するIBが流れます.それによってICが流れて抵抗R2で電圧降下IC×R2を生じますが,この電圧降下は電源電圧の5Vを超えません(Voutは負にならない).したがって,ICの最大値は5V/1kΩ=5mAであり,そのときVout=5V-5V=0V,IBIC/β=50μA,VinIB×R1+0.7V=1.7Vとなります.
 Vinを1.7Vより大きくしていくと,IBは増加しますがICは5mAで頭打ちとなり(トランジスタの飽和動作),Voutはほぼ0Vを保ちます.
 解答群を見ていきます.

 Vin=0のときはIB=0,したがってIC=0なので抵抗R2の電圧降下はなく,Vout=5Vとなります(アは正しい).

 0≦Vin≦0.7Vの範囲ではVoutはほぼ5Vを保ちます.0.7V<Vin≦1Vの範囲ではVin=0.7VのときVout=5V,Vin=1VのときVout=3.5Vとなります.すなわち,Vinを0Vから1Vまで直線的に変化させたとき,Voutは折れ線となります(イは誤り).

 Vinとして0Vを中心に振幅±0.1Vの正弦波を入力すると,Vin≦0のときは逆方向なのでIBが流れず,ICも流れません.Voutはほぼ5Vを保ちます.Vin≧0でも0.7Vに達しないのでやはりIBが流れず,ICも流れません.Voutはほぼ5Vを保ちます(ウは誤り).

 Vin=5Vを入力すると,トランジスタは飽和動作となり,コレクタ電流は5mAで頭打ちで,Voutはほぼ0Vとなります(エは誤り).