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トラ技Jr.

高校生が水中ロボットを開発,海底地形調査と沈降物確認の模擬訓練を実施

高校生が水中ロボットを開発,海底地形調査と沈降物確認の模擬訓練を実施

<森下 久志>

 2020年12月7日,鹿児島県立鹿児島水産高校(鹿児島県枕崎市)は,いおワールドかごしま水族館(鹿児島県鹿児島市)にて自作の水中ロボット(ROV;Remotely Operated Vehicle)を使った模擬訓練を実施しました.同校は文部科学省からスーパー・プロフェッショナル・ハイスクール(SPH)事業の指定を受けており,今回の模擬訓練はその研究成果を検証するために行われました.

写真1 自作水中ロボットによる模擬訓練のようす

 

 水中ロボットの開発に取り組んだのは,海洋科 機関コースの生徒11人.機関コースは,船に乗る機関士になることを目標としたコースです.
 2018年度にSPH事業の指定を受けてから水中ロボットの開発に着手し,2020年11月に完成しました.高校内にある屋外プールや,屋内に設置されている水槽などで操縦実績はあるものの,本格的な海での操縦は初めてです.懸念していた課題は一部で顕在化しましたが,模擬訓練はほぼ成功しました.組み立てキットなどを使わず,一から開発を始めた水中ロボットの制作には苦労も多かったとのことですが,参加した生徒らは代えがたい経験や思い出を手にしたようすでした.

写真2 開発した水中ロボット(ROV)

 

● 水中ロボットは安全な航路確保に貢献,水中のガレキ発見に力

 SPH事業における機関コースの研究テーマは,「激甚災害発生時の港湾内の航路を確保するための水中ロボット(ROV)の開発」です.このテーマを選んだ背景には,1995年の阪神淡路大震災や,2011年の東日本大震災での教訓があります.津波を伴う巨大地震では,港湾設備や船舶に甚大な被害が出ます.何よりも問題となったのは,海上や海底のがれきで航路が塞がれ,海上保安庁の巡視船や自衛隊の船舶などが着岸できないという事態でした.水中探査機による航路啓開ができないものか.11人の生徒たちが取り組んだ水中ロボットは,人命救助につなげる壮大な社会的使命を負っています.
 当日は,小型艇を用いたサイド・スキャン・ソナーによる海底沈殿物の捜索と,水中ロボットによる沈降物の映像確認と対象物のレーザ計測を行いました.

(a)モニタで確認しているところ

(b)モニタ画面

写真3 サイド・スキャン・ソナーによる確認

 

写真4 水中ロボットによる水中の映像確認

映像に映っているのは水中に投入したもう1台の水中ロボットである

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