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トラ技Jr.

「研究者」というお仕事 ~未来技術の実証に挑む!~

「研究者」というお仕事 ~未来技術の実証に挑む!~

産業技術総合研究所 エレクトロニクス研究部門
上級主任研究員
小池 汎平

Profile:小学生でラジオ作りを体験し,中学生のころからトラ技をむさぼり読むような電子工作少年でした.大学では迷わず電子工学科に入り,博士課程に進学.大学でしばらく助手を務めた後アメリカに留学し,帰国後は学生時代から尊敬していた研究者が在籍する研究所に就職,今に至ります.

●基礎研究を実用化に向けて磨き上げる

 私は,産業技術総合研究所に所属する研究者です.大学などで生まれた基礎研究の成果を,企業で実用化できる段階にまで磨き上げ,技術の橋渡しをすることが使命です.研究成果を実際に使ってもらい,改良を繰り返し,完成度を高めて世に送り出します.

 


 写真1 小池 汎平さん

 中学生のころに熱中したギター・エフェクタ作りを再開.
息子が文化祭で使ってくれて,ちょっと嬉しい

 

● 研究成果の例:低消費電力FPGA

 私たちの研究グループでは,ここ10 年ほど低消費電力FPGA の研究を進めてきました.「漏れ電流や動作速度にかかわるトランジスタの特性をプログラマブルにすることで,FPGA に書き込む回路データと合わせて設定できるようにする」というアイディアを基に,低消費電力FPGA「Flex Power FPGA」を開発しました.漏れ電流によるむだな電力消費を約1/50 に減らし,FPGA チップの燃費を1 桁以上改善しました.

 このFPGA チップを載せた評価ボード「AISTino」を同僚に手渡したら,おもしろがって使ってくれたので,すぐにデモ・システムが完成しました.おかげで一般公開の場で成果を具体的にプレゼンできました.

 

写真2 開発したチップの評価ボード(写真下)をArduinoとピン互換にした

さまざまなArduinoシールド(例えば,写真上のE-ink Displayシールド)を利用できる.
周りの研究者におもしろがって使ってもらえた

 

● 必要なスキル…興味は広く,うたぐり深く

 専門分野にこだわらず,いろいろなものへの興味を持ち続けることが大切です.研究のヒントは思わぬところに転がっています.また,何事も疑ってかかり,納得がいくまで自分で考え抜く粘り強さも重要です.

 

[本記事は,トラ技ジュニア No.30(2017年夏号)に掲載されたものであり,筆者の肩書き等は執筆当時のものです]