編集部
「施工管理」というお仕事 ~顧客のニーズをカタチにする~
株式会社オーエス
技術本部 施工管理部 東日本施工管理課
内藤 将成
仕事の内容
●何もない空間にAV設備を作り上げる創造的な仕事
施工管理という仕事は,工程管理,品質管理などを行う仕事です.規模が大きくなるほど工程も複雑になり,かかわる技術者も多くなります.計画的に施工を進め,質を高めるためには,施工管理は欠かせません.
仕事は,「クライアント・パートナが,会議室のリニューアルを考えている」など,営業部との会話から始まります.
内容は,ダイナミックな映像を映し出すスクリーン,プロジェクタの設置,音響設備であるミキサ,アンプ,スピーカの設置があります.さらに,AV設備を一括で操作するタッチパネル操作盤のプログラム・システムの設計まで完結させる仕事です.
上記を完遂するためには,顧客との綿密な打ち合わせから始まります.設置場所の下見をし,工程管理をしながら,施工完了までの監督業務,施工完了後のメンテナンス業務などが主な仕事になります.映像や音響の機材をゼロから選定する設計図面作成,同時に提案書および見積もり作成も大事な仕事です.
さらに仕事内容を精査し,協力業者,必要部材の手配などの仕入れ業務まで行います.
関連業務として,映像・音響設備の自動制御プログラムを作成し,実際に現場で自作プログラムの動作チェック,映像・音響のラインチェックや,不具合確認のためのデバッグ作業も行います.
出会いは学生時代
● 大学に設置されていたAVシステム設備に感動
大学時代に情報ネットワーク工学を専攻し,電気工学やプログラミング,通信工学に非常に興味がありました.映画鑑賞が趣味ということも重なり,映像・音響に携わる仕事に就きたいと考えていました.
大学在学中,大講堂に設置されていたAVシステムと設備管理に感動しました.プロジェクタ電源管理,スクリーン昇降制御,ディスプレイ電源管理,各マイクの音量調整,各入力選択など,タッチパネル一つで設備機器を制御していたのに驚きました.
このシステムに関し,素人ながらに設計担当者に疑問を投げかけたのを今でも覚えています.
学びと喜び
● 顧客からの要望に応えられた喜びが仕事の活力に
顧客から「プロジェクタが古いタイプで,投写映像が非常に暗く困っている」という相談を受けました.原因は,プロジェクタのランプ寿命が近づいていることですが,それだけではなく,スクリーンの汚れもあったため,同時交換を勧めました.
プロジェクタとスクリーン両方を新しく設置したところ,最新のプロジェクタの明るさに驚かれ,非常に感謝されました.
ある歴史博物館では,劇場AVシステムをアナログからディジタルに変更する際,20年近く動き続けていたプログラミングの再制作を一任されました.
このプログラムは,独自のロジック・シンボルと呼ばれる頻度の高い論理演算や,シーケンスのパーツを組み合わせて作成する手法です.
在学中,論理演算の基礎は理解していたため,経験者である先輩方に教わりながらプログラムを作成しました.
動作確認のときはバグだらけだったプログラムが,試行錯誤しながらも,すべて自分の描いたとおりに動作してくれたときの喜びは,かけがえのないものでした.
人々に歴史を伝える博物館のカリキュラムが,自分の作成したプログラムで動いているのです.誇りに思える仕事になりました.
技術職を目指す学生に一言
● チャレンジを恐れず,自分の限界を決めないこと
日々変化する顧客のニーズに沿うため,技術本部での業務は多種多様です.製品だけではなくサービスも含め,顧客が求めているカタチをいかにして提供できるかを考え,その術を学びます.それこそが技術職の面白さ,楽しさであると思います.
成長するためにチャレンジすることを恐れない,自分でリミットを決めないボーダレスな人材が必要とされているのではないでしょうか.
[コラム]開発に携わった製品 AV設備機器を制御する「タッチパネル操作盤」
● 案件①施工したAV システムのユーザ・インターフェースの開発
写真Aは,AV設備全体の一例です.写真BがAVシステムを操作するタッチパネルです.
AVシステムのタッチパネル画面を図Aに示します.電源ON/OFFやスクリーンの昇降など,操作が複雑な複数の機器をこの操作パネルを使って一括で操作できるようにしています.
制御内容は,プロジェクタへ投影するための画像や映像などのソース選択,2台あるディスプレイへのソース選択,マスタ・ボリュームの音量調整です.プロジェクタ,ディスプレイの電源ON/OFFの管理画面も別に設けてあります.
● 案件②タッチパネルからの入力情報を処理するプログラムの開発
図Bに示す画面は,タッチパネルのボタンを押したとき,機材に対して動作を指示するプログラムです.これは,ユーザ側では見ることができません.システム裏で動いているものです.
ソース選択に必要なプログラムの一例として,スイッチャと呼ばれる機材に,システム・コントローラからRS-232Cシリアル通信によって,指令のコマンドを送出させるプログラムを組み込みます.プロジェクタのON/OFF動作も同様です.
図Aの終了ボタンを押すと,それぞれの機材に組み込まれている電源を落とすプログラムが働きます.各機材の電源が集約する電源制御器に対して,システム・コントローラからリレー回路を利用して,ON/OFF動作を実現します.
[本記事は,トラ技ジュニア No.28(2017年冬号)に掲載されたものであり,筆者の肩書き等は執筆当時のものです]