編集部
「プロダクト・デザイナ」というお仕事 ~デザインした商品が世に出たときの達成感がやみつきに!~
堀内 芳明
1984年山梨県生まれ.
2010年東北芸術工科大学 大学院芸術工学研究科 修士課程 修了.後に,同大学にて産学連携担当として従事. 2011年から大学に勤めながら,フリーランスでオーディオ・アンプの筐体やゴルフ・クラブなどのデザインを手がけてきた.
2015年4月から,福島県ハイテクプラザ会津若松技術センターにて,研究員として会津塗りの製品を中心とした伝統工芸品のデザインを担当.
仕事の内容
● 色や形をデザインするだけではなく,商品企画から製造まで総合的なものづくりにかかわる
プロダクト・デザイナは,商品(プロダクト)のデザインを手がける仕事です.色や形をデザインするだけではなく,商品企画から製造まで総合的なものづくりに長期間かかわります. デザインをする際は,使ってもらう相手に対する思いやりの心を持つことがとても大切だと考えています.
(1)多くのアイデアの中からコンセプトや商品の特徴を決める.
(2)詳細が決まったらデザインの開発を始める.
(3)アイデアのスケッチや試作を何回も繰り返して,デザインを固める.
(4)デザインを固めたら3D や図面を制作して製造につなげる.
出会い
● 最低限の形態要素で構成された眼鏡の機能美に心を打たれてプロダクト・デザイナを目指す!
高校時代に,デザイン・ディレクタで医学博士の川崎和男さんがデザインした眼鏡「MP-690(写真2)」に出会いました.将来プロダクト・デザイナになって,多くのものづくりに携わりたいと思うきっかけになりました.
この眼鏡は,かけるときにフレームからレンズに伝わる圧力を軽減する技術が採用されています.レンズをネジ止めしなくても穴にはめ込むだけでしっかりと固定できる構造になっています.シンプルな形状ですが,とても優れた技術が詰まっています.
最低限の形態要素で構成された眼鏡の機能美に心を打たれました. この眼鏡は現在も大切に愛用しています.
写真2 プロダクト・デザイナを志すきっかけとなった眼鏡「MP-690」
デザイン・ディレクタで医学博士の川崎和男さんがデザインした製品.フレームの曲がり部分がレンズ に伝わる圧力を軽減する「アンチテンション」という技術や,突起にレンズをはめ込むだけでしっかり と固定できる構造が採用されている.パリ国際アイグラスショー「Silmo」では,日本の眼鏡企業として 初めてデザインコンペ・グランプリ金賞とドイツiFDesign Awardグランプリを受賞している
必要なスキル
● コミュニケーション能力と情報分析力が求められる
プロダクト・デザイナになるには専門的な知識やスキルが必要です.大学や専門学校に入学してプロダクト・デザインの基本を学ぶことをお勧めします.
商品をデザインするときは,ものづくりにかかわるすべての方と話をしながら構想を膨らませます.多くの情報の中から適切にニーズをつかむ分析力や,自分の考えを相手に伝えるためのスケッチやモデル制作力,プレゼンテーション力,表現力などが求められます.
パソコン操作ではAdobe Illustrator/Photoshopや2DCAD,3DCADなどの操作スキルが必要です.他にも,ものづくりを行う上で,素材や色彩などの,製造技術に関する知識が必要です.
やりがい
● デザインした商品が世に出たときの達成感がやみつきに!
デザイナとしてものづくりに携わると,繰り返しの修正作業などに長い時間と大きな労力が掛かります.
開発が進むにつれて,想い描いているものが徐々に形として見えてくると,モチベーションが上がり更に良いものを作ろうと気持ちが入ります.
気持ちを込めてデザインした商品が世に出たときの達成感はやみつきになります.実際に,自分がデザインした商品を,使った人が喜んでくれる姿を見たときの感動は忘れられません.
長い時間と苦労を重ねてデザインしたもののすべてが,自分の子どものような大切な存在です.
[コラム] デザインを手がけたUSB オーディオ・アンプ・キット「LV-1.0」
写真A 必要な要素だけに絞り,シンプルな構造になるよう心が けてデザインしたUSB オーディオ・アンプ・キット「LV-1.0」
LV-1.0 は,卓上での使用を想定しているので,身近なサイズであるA4サイズ(210×297mm)とほぼ同じ大きさにしています. 図A(a)に示す①~⑥の基板は,機能の違いが一目でわかるように色分けしました.
[本記事は,トラ技ジュニア No.26(2016年夏号)に掲載されたものであり,筆者の肩書き等は執筆当時のものです]