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「光波」の新現象を創出・応用! 電気通信大学 情報理工学域III類 情報理工学研究科基盤理工学専攻 宮本研究室

「光波」の新現象を創出・応用! 電気通信大学 情報理工学域III類 情報理工学研究科基盤理工学専攻 宮本研究室

<宮本 洋子>

研究室の紹介

 光は電場や磁場の振動が空間を伝わっていく波の一種です.まっすぐに進むというイメージがありますが,振幅(電場や磁場の振れ幅),位相(振動の山や谷のタイミング),偏光状態(電場や磁場の振動方向の偏り)の空間分布を制御することによって,進行方向を曲げたり複雑な立体構造を持たせたりすることが可能です.また振幅・位相・偏光状態の空間分布を詳しく測ることで,光が通って来た経路について知ることができます.本研究室ではこれらの制御・測定を通して,光の性質のより深い理解と新しい技術の創造を目指します.特に,光が回転しながら進む「光渦」や,光波の位相や振動方向などが定まらなくなる「特異点」と呼ばれる構造に興味を持っています.

構成員:宮本洋子(教授),大学院生,学域学生.外国人のポスドクや研究生がいることも多いです.

 

特筆する研究内容

 本研究室の研究には3つの柱があります.

ホログラム素子の作製

 1つめは,特別な空間分布を持つ光を作り出すためのホログラム素子の作製です.波は位相が遅れた部分を作ると遅れた方向に曲がる性質があります.そこで電子線を使って透明なポリマー膜に凹凸を作り,凸部を通った光が凹部を通った光に比べて遅れることを利用して,光の進行方向を曲げます.

 ただし電子線描画装置には歪みがあり,また電子を当てた量を凹凸に変換するには化学反応を使うため,設計通りの素子ができるとは限りません.ホログラム素子が作り出した位相分布を調べ,作製過程にフィードバックすることが重要です.

渦をもつ光の性質を調べる

 2つめは,上記のホログラム素子等を使って渦をもつ光を作り出し,その性質を調べることです(図1).渦をもつ光は角運動量をもち,微小物体を回転させることができます.このような光の空間構造を使って物体を動かす技術では,光ビーム内のエネルギーや運動量の流れが重要になるため,これらを測定する研究に取り組んでいます.また,渦をもつ光を使って量子力学的な情報を送受信する技術にも取り組んでいます.

 

図1 渦をもつ光

 

物体の3次元的な形を精密に測定する

 3つめは,光の位相分布を調べる技術を応用して,物体の3次元的な形を精密に測定する研究です.レーザ・プロジェクタ等に用いられる高速に振動する鏡の変形の様子を調べる装置の開発や,プロジェクタで投影された縞画像の変形からリアルタイムで物体の詳細な形状を計算する装置の開発等を行っています(図2).

図2 縞画像投影装置(左)と物体の高さによる縞の移動の仕組み(右)

斜め上から投影して上から撮影するので,物体の高さによって縞が移動して見える

研究成果物

S. Choudhary et al.; Measurement of the radial mode spectrum of photons through a phase-retrieval method, Opt. Lett. 43, 6101 (2018).
Y. Miyamoto et al.; Detailed measurement of phase distribution of an optical beam with inverting vortex, J. Opt. 15, 044002 (2013).
Y. Miyamoto et al.; Detection of superposition in the orビットal angular momentum of photons without excess components and its application in the verification of non-classical correlation, J. Opt. 13, 064027 (2011).
▲特許情報
武田光夫,王ウェイ,石井信生,宮本洋子;微小変位計測法および装置,特許第4644819号(Dec. 17, 2010)他

◆電気通信大学 情報理工学域III類/情報理工学研究科基盤理工学専攻 宮本研究室のWebサイト
 http://www.qopt.es.uec.ac.jp/

 

[本記事の情報は2020年1月時点のものです]