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医学&工学&芸術の連携研究を推進! 帝京大学 理工学部 情報電子工学科 小川充洋研究室

医学&工学&芸術の連携研究を推進! 帝京大学 理工学部 情報電子工学科 小川充洋研究室

<小川 充洋>

研究室の紹介

 近年,人間の生活の質の向上のために,ヒトなどの生体について研究する分野である「生体工学」や,医療分野での工学応用を研究する「医工学」などの分野が注目されています.

 帝京大学理工学部情報電子工学科・小川充洋研究室では,これらの「社会性動物としての人間」および「生命としてのヒト」に関する分野を主に研究・教育を行っています.また,これら生体医工学から発展して,福祉工学やゲーム・サイエンスなどの,人間支援や娯楽に関する科学・技術についても取り扱っています.さらに,実学の観点から,「ハードウェア」,「ソフトウェア」およびそれらを統合した「組み込みシステム」のいずれにおいても,学生と教員がともに手を動かして,実社会でも通用するハード/ソフト/システムの開発・作製に挑戦しています.これによって,既製品を使うだけの人材ではなく,自分が使うシステムを自身で開発できる人材を育成します.

 また最近,工学技術を医学や医療のために役立てる「医工連携」という試みが盛んに行われるようになってきました.本研究室でもこの「医工連携」に関する研究を行っていますが,本研究室ではこの「医工連携」に,さらにディジタル・ゲームやメディア芸術などの芸術分野を融合した「医学工学芸術連携研究」を進めています.

特筆する具体的研究

 本研究室の研究の特色の1つは,ディジタル・ゲームのプレイ中の心理ストレスの検知やディジタル・ゲームの「面白さ」の客観的評価を目指して,ディジタル・ゲーム・プレイ中の生体計測を行っていることです.

 ディジタル・ゲーム・プレイ時の生体計測を行う研究は過去からいくつかありますが,本研究室では計測ハードウェア開発も可能であるという特色を生かし,独自のハードウェア開発を行っています.具体的には,ゲーム・コントローラやVRディスプレイ・ヘッドセットのような,ディジタル・ゲーム・コンテンツをプレイする際に必ず用いる「ゲーム・デバイス」と呼ばれる装置に生体計測装置を埋設・統合し,ゲームを行うときには必ず生体計測を行い,計測データを自動取得できるシステムを開発しています(写真1)。

写真1 VRディスプレイ埋設型脈拍計による脈拍計測

ノートPCに表示された波形は,VRディスプレイに統合した計測装置から得られた脈拍波形である

 

 また,このようなコンセプトを発展させ,VR酔いの検知が可能なVRディスプレイ装置の開発にも挑戦しています.このような装置が完成すれば,VR酔いしやすい人にも安全にVRコンテンツを視聴・体験してもらうことが可能になると考えています.また,ディジタル・ゲーム装置に生体計測装置を統合できれば,ゲームを行う度に生体データを得ることができます.このデータを健康管理や予防医学のために用いることができれば,「ゲームをすればするほど健康になる」という新たな健康管理コンセプトを提案できると考えています(図1)。

図1 ディジタル・ゲームと生体計測の統合による健康管理のコンセプト「ゲームをすればするほど健康になる」

 

主たる研究成果

【ディジタル・ゲームと生体計測に関するもの】

[1] M. Ogawa, Digital Game Devices with Physiological Measurement; For Games as Future Healthcare Bases, Procs. of 2019 IEEE 7th International Conference on Serious Games and Applications for Health, 2019.

[2] S. Otsuka†, K. Kurosaki‡ and M. Ogawa, Physiological measurements on a gaming virtual reality headset using photoplethysmography: A preliminary attempt at incorporating physiological measurement with gaming, Procs. of IEEE Region 10 Annual International Conference, 2017 (大学院生†, 学部生‡との共著による国際学会発表)

【その他生体計測に関する特許】

[3] 特願2018-567404, 特願2017-141677

 

◆帝京大学 理工学部 情報電子工学科 小川充洋研究室のWebサイト

https://www.teikyo-u.ac.jp/faculties/undergraduate/science_tech/human_info_sys_ogawa.html

 

[本記事の情報は2020年1月時点のものです]