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トラ技ジュニア検定⑬【正答と解説】プリント基板の基礎知識~基板作成の流れと材質,種類~

トラ技ジュニア検定⑬【正答と解説】プリント基板の基礎知識~基板作成の流れと材質,種類~

トラ技ジュニア No.57(2024春号)p.37掲載

【トラ技ジュニア検定⑬】プリント基板の基礎知識~基板作成の流れと材質,種類~の解答と解説を掲載します.

問題文および図については,誌面にてご確認ください.                                                  <宮崎 仁>

[正解]

 (ウ) 

 

[解説]

 解答群の4つの文は,主にプリント配線板(PWM)の材料や構造,機能に関する基礎知識について述べたものです.

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 一般に,FR-4グレードのガラス・エポキシ基板が広く使われている.このFR-4というのは,プリント基板の耐湿性と高周波特性を保証する規格である.

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 この文は誤りです.
 FR-4のFRとは,Flame Retardantの略で,直訳すると耐火性,難燃性です.紙フェノール基板に比べて,ガラス・エポキシ基板は絶縁性(耐湿性),機械強度,高周波特性(誘電正接),耐熱性などいろいろな点で優れていますが,FR-4というグレードはそのうちの耐熱性についての規格です.ガラス・エポキシ基板には普通品(FR-4)と難燃品(FR-5)の2つのグレードがありますが,一般に使われているのはFR-4なので,ガラスエポキシ基板と言えばFR-4という感じもあります.

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 プリント基板のパターンに一般に銅箔を用いるのは,金,銀,銅のうちで銅が最も電気抵抗率が低く,酸化しにくいためである.

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 この文は誤りです.
 金,銀,銅の3つの元素で比べると,電気抵抗率は銀が最も低く,銀<銅<金の順(銅は2位),酸化に対する安定性は金が最も高く,金>銀>銅の順(銅は3位)です.しかし,金や銀は資源量が少なく高価です.銅は銀に次いで電気抵抗率が低く,資源量も多く,採掘や精錬も容易なので各種の電線,電極やプリント基板のパターンに広く使われています.

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 両面基板や一般的な多層基板(貫通多層基板)では,スルーホール(貫通孔)の内面をめっきしたビア(via)を用いて両面間や層間の接続を行っている.(正)

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 この文は正しい記述であり,本問の正解です.
 昔,最初に使われるようになったプリント基板は,基板の裏面だけに配線パターンを形成し(片面基板),基板の所定の位置に穴(貫通孔:スルーホール)を開けて,部品のリード線を挿入して裏面ではんだ付けする方式でした.この実装方式を,挿入実装またはスルーホール実装と呼びます.それで,片面基板の表面を部品面と呼び,裏面をはんだ面またはパターン面と呼んでいました.
 次第に,小型の基板上に複雑な配線を実現したいという要求に応えて,基板の両面に配線パターンを形成するようになってきました.この場合,表面と裏面のパターンを貫通するスルーホールを設け,穴の内面を銅めっきしてパターンを接続しています.電気信号が経由する通り道という意味で,ただの穴ではなく,特にviaと呼ばれるようになりました.
 多層基板が使われるようになり,表面と裏面だけでなく,内層も含めて,via(内面をめっきしたスルーホール)を用いて層間接続ができます.
 なお,高級な多層基板の一種として,ビルド・アップ基板という1層ずつ積み上げながら作っていく方式のものがあり,その場合には全層を貫通する穴は開けずに,隣接する層間に小さなviaを形成して層間接続する場合もあります.

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 プリント基板には緑色,赤色,濃青色,黒色など色の違うものがある.これは,基板の素材であるエポキシ樹脂の色が違っているためである.

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 この文は誤りです.
 基板が緑色なのは,基板の元々の色(エポキシ樹脂やフェノール樹脂の色)ではなく,後から塗布したソルダ・レジストの色です.
 必要な配線パターンを形成して,スルーホールの穴あけが終わった配線基板(PWM)には,一般にソルダ・レジストと呼ばれる保護膜を塗布します.挿入実装(スルーホール実装)のはんだ付け工程を自動化・省力化する方法として,部品を挿入した基板の裏面から高温にして溶かしたはんだを噴流させるフローはんだという製造法が使われるようになりました.その時に,はんだ付けが必要なリード線の周辺(ランド部分)以外のパターンに不要なはんだが付かないように,あらかじめ保護膜で覆っておくためのものです.
 この保護膜の材料に緑色の顔料を混ぜておくと,基板全体が緑色になって見栄えが良く,また目視検査の工程でも作業者の目が疲れにくく不良を発見しやすいというので,緑色のソルダ・レジストが一般的になりました.
 最近では,基板の機能や特性によって色分けして示したり,マイコン・ボードなどでは個性的に見えるように赤色,青色などの色を使用したり,LED基板では反射により明るさが増すように白色を使用したり,カメラやイメージ・センサ基板では反射を防ぐために黒色を使用したり,というようにさまざまな色の基板が作られています.そのために,ソルダ・レジストのメーカでは,各色のソルダ・レジストを販売しています.